なんてこともない

コリンス

人間と獣人が共存する世界。 そこへ生まれた俺は、この世界が現実になった。 けれどもこの世界は、共存と謳いながらも影では、やはり人間の性か、一部の少数の人間は獣人を陰ながら差別している節がある。もちろん逆もまた然り。 俺はそんな環境で育たなかったためか、特にこれといった感情はない。 ただヒトによっては人間(獣人)に触れるだけで倒れるヒトもいるらしい。 自分とどこが違うのか、大して差は無いだろうに。それでもそんな、イルカが哺乳類だとわからない人の方が多いのも知っている。 この多種族共存社会という名の仮面舞踏会。それは偽善者同士が、互いが互いの足を引っ張り合いながらも楽しげに踊り。真の正直者だけが外で、城の窓から漏れ出す明かりを灰かぶりのような心情で見ている。 俺はそんな、城と城下を繋ぐ門の見張り。そんな立ち位置。自分の行い次第で敵も味方も容易に作れてしまう。いっそ敵味方がはっきりしてくれたらな。余計なこと、考えなくていいのだろうか。 だけどそんなことは誰一人としてしない。 日常の革命を嫌うものたち。俺もその一人。 ある日途中に、本当に重要な選択肢が現れても俺は逃げてしまうだろう。 例えそれが、悲劇しか生まないとしても。今が変わっても。後悔も何もない。 だって誰だってそれを見ることに臆病になってしまうから。

「あち〜」 地中から顔を出し、成虫になった蝉が街路樹に止まり、大合唱を始めた7月の某日。 風呂の中のような、気温と湿度が夏が本格的に始まるのだと、嫌と言うほど今年も思い知らされる。 止めどない汗を手で拭いながら、目の前の様々な種族の人々の人混みを歩いている。

俺の名は黒崎 陽輝。種族は人間種。年齢は21。高校を卒業し、東京に上京し、大学へ通う華の大学生。 今は同居人とルームシェアしながら暮らしており、そいつも一応同じ大学に通っている。 同居人以外の地元の友達はまあいるが、二人以外地元に残ったかここ以外へ移った。 別に寂しいわけでもないし、今の時代、連絡先さえ知っていれば液晶の画面越しにだが会えるものだ。

道中は週末ということもあってか、人通りが比較的多い。 俺と同じ人間、獣人、竜人。若い人から年老いた人、さまざまな種族の人々が暮らし、行き交う。 それがここ東京都の東部に位置する市街地、契街。その昔、この地に多種のヒトが集まり、多くの企業を興し、他所と積極的に手を結んだりしながら発展した事でその名がつけられた。 まさに多種族共存社会の手本を象徴するような街。実際にグローバル化もかなり進んでおり、先進的で多様性な生き方もできるということ。 と、これが俺が3年間住んでてやっと分かったこの街の特徴だ。 俺も上京してきて住んでみて本当に居心地がいい。本気で第二の故郷にしてもいいくらい。住めば都って聞くけれど、ここは最初から誰でもウェルカムな都だ。

と、そうこうしている内に自宅であるマンションへ到着。 このマンションの立地も、徒歩圏内にコンビニや駅、もっと行けばスーパーマーケット。家賃も学生でも手頃と、痒いところで手が届き、至れり尽くせりな神物件。 とはいえ、ほぼ俺が選んだわけじゃ無くて、同居人と下宿先決めるあたりで、どうせ一緒の大学行くんだったらルームシェアが良くね?ということで今に至るわけだ。

エントランスにてエレベータで目的の階まで上がり、住んでいる部屋の前まで行き、鍵を開けて中へ入る。 「ただいま〜」 何回目かのただいまを言う。ドアを開けて、空気を少し吸うと芳香剤と一緒に食欲を掻き立てる良い匂いが鼻を通っていく。 「おう、おかえり〜」 靴を脱ぎながら、漂う良い匂いに浸っていると、奥の方から大きな声がして、それに比例するくらいのデカい狼獣人がこちらへ歩み寄って来た。 玄関までお出迎えしてくれたのは、例の一緒に部屋に住んでる犬…もとい狼。 名前は白星 一也。年は俺と同じで、種族は狼獣人。毛並みは珍しいアルビノ種で綺麗な純白の毛皮を している。 「それで、旦那様?ご飯にするか、お風呂にするか、そ・れ・と・も?」 「バカなこと言ってないで早く飯食おうぜ」 「おう!わかった。もうご飯出来てるからな。そしてお風呂から上がったら…」 「はいはい、お楽しみだろ?」 性格は見ての通りお調子者で、隙さえあれば俺をおちょくっている。 前まではよくあいつの誘導尋問に引っかかっていたが、今も、ニヤニヤ笑っていたあいつの顔も手口も今も昔も変わらない。あとホント生き甲斐かってくらい飽きない。 「お〜うまそう〜」 リビングへ戻ると、テーブルの上には一也が作ってくれたであろう、食事が並んでいた。玄関開けた時と同じで良い匂いがさらに強く香る。 「へへっ、今日は旦那様のために、精がつくモノを用意したぜ?」 献立を見る限り、ひつまぶし、冷や汁(とろろ付き)、貝類のカルパッチョ。あとは冷蔵庫の野菜室に見えた、 カットされたスイカ。夏の暑さでも食べられる、さっぱりと胃に優しいメニューが揃っている。 それは作った本人が食欲が湧かず、手抜きをしているわけではなく、食べる側のことも考えて栄養面や健康面にも考慮されている。と信じたい。 「うん、今日も美味しそうだー」 「だろ?ほら、早く食べてお楽しみと洒落込もうぜ」 「「いっただぎま〜す」」 テーブルの席に座り、お互い手を合わせ、利き手に箸を持ち食を進めていく。 「うまい」 こいつの作る料理はいつも絶品だ。 本人の思惑通り、一度食べ始めると、食欲が一気に湧き出てくる。さらに実家が酒屋ということもあってか、味付けはまさに懐かしい家庭の味といったところ。 実は、ルームシェアを決めるにあたってもう一つ理由がある。それはこの流れで言わずもがな、家事全般。 俺はどうも家事が苦手だ。一也よりも陽輝の方がガサツと言われるほど。よくそれで一人暮らしする気なったなと言われはしたけども。 今のところは、一也に一から教わりながら、一也には及ばないが何とか人並み程度にはできてはいる。 これだけ上手い料理を作れるのなら実家の酒屋を継がないのかと尋ねたところ。 「いや、料理がうまいだけじゃ居酒屋って店は成たねぇだろ。それに、別に歴史があるだとか継がなきゃいけないだとか親の強制もないし」 「それに、俺は俺のやりたいことをする。まずは、夢のために東京へ行く!」 本人の言うことはごもっともだと思うけど。最初にやることが東京の大学まで進学って…。 当時は、田舎者の代表的な台詞だと軽く聞き流していたけど…一也はそれを容易でこなせる実力を持っている。 俺もそんな一也の生き様に惹かれた内の一人だ。 でも、彼が言う夢が何なのかいまだに誰も話していない。俺だって聞いたこともない。 今日こそ飲む酒でぽろっと、言ってくれないかと言う期待も持っている。 聞かれても簡単に言わないんだ。彼の弱みに匹敵するくらいの秘密があるんだろう。 そんなやましい気持ちが、いつの間にか日々の楽しみだったりする。

さて、食事が終わって、後片付けをとお風呂を済ませて、彼の言っていたお楽しみの時間だ。冷蔵庫から買ってきた缶ビールとおつまみ、ガラスのグラスをテーブルに並べる。 そしてプルタブを開けてグラスに注いでいく。注ぐ時のシュワシュワと気泡の音がまるでこの一週間の苦労を心から労ってくれる。 「「今週もお互いお疲れ様。乾杯〜!」」 それぞれに黄金色に染まった二つのグラスを小気味いい音を鳴らし、喉へ勢いよく流し込む。そして…。 「「うま〜い!」」 もう酒が回ったみたいに、大声で今まで溜まった鬱憤を晴らすように叫ぶ。部屋が聴覚に敏感な獣人でも快適に過ごせるよう、防音機能に特化していなかったら、こんなことは気軽に出来ないだろう。 「そういやもう、7年だな」 「7年って?」 「いや?お前と付き合ってから」 「付き合ってってなんだよ…カップルじゃないんだから」 「いやぁ〜覚えてない?中学の頃」 付き合ってって初めて出会った頃かよ。酒が回ってもこいつの意地の悪さは健在だ。 一也の言う通り、俺たちが初めて出会ったのは中学の頃。 当時、俺は所謂転校生ってやつで、一也と同じクラスに転入し、たまたま隣の席同士になって、そこから関係が始まって。紆余曲折ありながら現在に至る。所謂腐れ縁ってやつだ。 「何だよ、それ。わざわざ覚えていたのか?」 「ん〜、まあな。狼って絆を大事にするって言われてるからな」 自分で言うか?と、ツッコみたくなるが。実際こいつとはいい思い出も悪い思い出もある。 こうして面と向かってもネットの海の中でも、お互い飽きもせずに。 「お前にそんな部分があったなんて意外だな」 「いやいや、お前俺のことどんな風に見てたの…」 「女の子を誰彼構わず引っ掛ける性豪かと」 「さっき言ってたこと聞いてた⁉︎狼は情を大切にするの!一途で純情な漢なの!」 「はいはい、お前は(エセ)紳士でカッコいいよ」 「たく〜、信じてないな?俺が今まで何をしてそんな根拠を…」 「だってお前、高校の時、付き合ってた彼女降ったじゃん」 「あ〜そんなこともあった…かなぁ?」 「それを棚に上げて、何が一途な漢だよ。顔ペテン師め。どうせ、弄んで満足したら、捨てたんだろ?」 「流石にそこまではしてねぇよ!ただ…その…毎回付き合う子が俺に…合わなくて… で、でも今はそんなことしてない!」 「今はいないからやってないだけだろ?やっぱ今の時代、男って外見より中身よ」 「そう言う陽輝こそ、生まれてこの方ずっと彼女いないだろロマンチスト童貞め」 「なにおう〜?」 「んん〜?」 「……」 「「あっははははは!!」」 「お前!ロマンチスト童貞ってなんだよ! 俺そんなとこあったのかよ!」 「顔ペテン師ってそれ、俺のことモテるイケメンだって認めてるってことだよな⁉︎」 「あ〜おっかし。はっはは」 まださっきの一杯しか飲んでないのに、もうアルコールが回ったみたいに二人で馬鹿みたいに大笑いする。 思えば、俺と二人でいる時は大抵こうしてバカやって大笑いしていたな。 「は〜あ、でも本気で彼女欲しいなぁ。青春の甘酸っぱい恋はできなくても、大人の甘〜い恋はしてみたいな〜」 「そんなに彼女欲しいの?」 「モテる誰かさんと違って、俺は欲しいんだよ。学生でいられるのも無限じゃないし、1秒でも長く遊びたいじゃん?」 「まあ…そう、だな?うん」 「なあ…だったらさ…付き合ってみるか?俺と…」 一也が突然声色を変えて、本当に突拍子もないことを提案した。もちろん冗談だと承知でこう返した。 「え〜?一也と?なにそれ〜慰めのつもり?いくらもうベロベロに酔ってるからって冗談きついよ?」 「…んかじゃねぇ」 「え?ごめん。よく聞こえなかった。もう一回言って?」 「…ああ、やっぱり冗談だよ。陽輝があまりにも情けないくらいモテないから俺が彼女になってやろうかな〜ってあはは〜」 「なんだよ〜いくら俺が一生モテないからってさあ」 「え〜?どうかな〜…」 「そうだよ〜今に見てろ?とびきり可愛い子捕まえて、お前に見せてやるからな?」 俺は一也の肩をバンバンと意地返しで叩いた。 それからしばらく、他愛無い話を交わした。買ってきたビールやおつまみが段々空になる頃には、お互い呂律が回らず、会話も少し成り立たなくなってきた、そんな頃。 「あれ?もう無くなっちゃった…もう無いの?」 「これがラスト一本だ、今日はもうお終いだな」 「う〜んそっか〜。ていうかお前まだ酔ってないの?もっと飲みなよ〜俺だけ〜寂しいゾ」 「いや俺お酒弱いし、俺もうこれでいいしあとはお前で…って⁉︎何すん…」 急に立ち上がったかと思えば俺の隣の席に座り、そして席ごと近寄ってきて、俺の肩に腕を回して、そのままくっついて来たのだ。 「いいか〜?酒飲みってのは実質漢と漢の真剣勝負なんだ〜、どっちかが、倒れるまで飲む!勝手にお開きに するってんなら、俺が許さ〜ないぞー」 何を言っているんだと、言ってもこいつも相当出来上がっていて、白の被毛に包まれた頬がほんのり赤く 染まっていた。 「ほら!飲め!お前と一緒に飲む酒はやっぱ美味いな〜…っく」 そう言って一也が持っていたコップに入ったビールを無理やり飲ませてくる。 抵抗しようにも、鍛えられたふわふわの極太の腕にがっしりと体を固定されているため動けず、なすがままで、 危うく今日の晩御飯が逆流しそうだった。 「あ〜いい飲みっぷりだな〜やっぱ酒の強い男が女に惚れるのよ」 こいつは、具合が悪い俺が見えていないんだろうか? そういえば、一也の親父さんも酒を飲めば酒癖が異常に悪く、よく飲兵衛になっていたと今思い出した。毛並みも同じ白色だったし、居酒屋の息子だと言うことも差し引いて、一也は親父さんの酒癖の悪さがモロに遺伝しているようである。血は争えないな……。 「なぁさ〜俺寂しかったんだぜ?お前が帰ってこない間」 「寂しかった?お前が…?」 いや、あり得ないだろう。こいつは孤独とは無縁なんだから。いつも俺の他にも友達を何人もいて、部活とかでも結構な人に慕われていて……。 ああそうか、いつも誰かしら周りにいるから一人だと逆に落ち着かないのか? だとしても、この生活ももう3年目だしいい加減に慣れる頃だと思うが。 「ご飯作っててもさ〜、よ〜きってば全然帰ってこないんだもん。連絡くらいよこせよ…」 急にしゅんとしよらしくなって、顔が俯き、いつも元気に揺れていた尻尾もダランと力無く垂れ下がっている。 それにさっきまで俺の首を蛇の如く締め付けていた腕もすっかり力が抜けている。 どうやら本気で落ち込んでいる?ここまで出来上がっているから、そこまで嘘はつけないと思うし。 「あ〜ごめんな?」 腕を伸ばして、影ができていた一也の顎の下を優しく掻いてみる。あれ?これって猫科の獣人が喜ぶんだっけか?犬系も顎に下には弱いってきったことあるけど…。 けど背丈的に顎の下しか届かないから…あとはお腹?でも、そこは親しい人しか触っちゃいけない暗黙の了解みたいなものがあるって…う〜ん。 「まさか、お前がここまで寂しがり屋だとは思わなくて…ほら、機嫌なおして。こうして撫でてあげるからさ…」 「くっ!陽輝!」 「え?」 一也が言うや否や、顎の下を撫でていた右手と開いていた左手を俺が意識しないうちに素早く掴み取って、 そこから急にふわっと浮遊感が与えられる。それは一也が俺をそのまま両手で持ち上げられ、抱えられた。お姫様抱っこの状態されたのだと遅れて理解する。 ここまで、一也はかなり酔っているにも関わらず、まるで手慣れたような動作といきなりの出来事に俺はまたされるがままにされる。 一也は俺を抱えたまま、寝室の方へと運んでいった。俺は状況こそは理解しても、一也の行動の 意図までは理解しきれなかった。顔を見上げて見ても、彼の表情は必死そうで余計に訳がわからなかった。 寝室に着くと、部屋の電気をつけて、俺を一也が寝ているベットへと寝かせて、俺の上へと覆い被さった。 その構図はまるで獲物追い詰めた肉食獣と追い詰められた草食動物。一也が前者、俺が後者だった。 一也はさっきと変わらない必死で少し悲しそうな顔のまま、四つん這いで一歩一歩着実に顔の距離を近づけてくる。 「なあ、もういいだろ?いつになったら素直になるんだ?」 耳元で、いつもよりも低い声で囁く。その度に白色の太いマズルの口から、酒臭い生暖かい一也の吐息が首筋あたりを撫で回すようにかかる。それだけで、鳥肌が立ち、全身がゾクゾクと強張る。それに伴い、呼吸もままならなく、ひどく緊張状態に陥っている。 今の現状から来る恐怖か、素直になるの意味か。いや、それすらも思いつかないほど考えがつかず、ただ、目の前の捕食者に喰われるのではないかという恐怖しか頭にしかなかった。 「な、なんのつもりだよ、おい…」 対する被食者は負け犬の精一杯の威嚇。埃すら吹き飛ばないほどの弱々しさ。元より抵抗したところで、自分よりも二回り大きい、獣人の体躯の相手に勝てる見込みなんて最初からない。 「何って、約束を果たしに」 「はあ?」 「今度は俺がお前を守っていくって約束。それを叶えるためには俺がお前と番になる事なんだ。 俺は陽輝、お前が好きだ。一緒に添い遂げたいんだ…」 好き。一也が好き、俺を?あの一也が俺を? 「なんだよ…それ…」 「言葉通りだ。俺はお前を守ると改めて決めた時、あれからしばらくして、お前のことが好きだと気づいてな。守っていきたいなら相応の雄にならないと思ってな。それで東京の、それこそいい大学に通って、 お前を…」 「待てよ…」 なんで、なんでそんな、肯定的な顔するんだよ。 一也はいつもの酔いの勢いとか、冗談でも何でもなく。一切嘘をついていないんだと切に訴えていた。 本当に、俺の全てを欲している獣の顔をしていた。もちろんそんな一也の顔なんて目の前以外のことでは初めてだ。 「ん?どうした?ああ、もちろん陽輝は心配はいらないさ。ずっと約束だったからな。あとはお前の返事次第だ。お前もいずれ、こんなことになるのを望んでいたんだろう?」 「…っ。だってお前…高校の時、彼女いたじゃん?それもこれ見よがしに楽しそうに。 自慢までして…」 「確かに、いたな。けど、俺がお前を好きと自覚してからはあえて辞めたんだ」 「辞めたって…」 「ああ、今日行っていた通り、振った。捨てたんだよ、それなのに、やれ責任とれだ、訴えるだ、退学にするだって。全く、愛していた根拠も言動もないのに。 そんなあいつよりも、お前の方がずっと良い。ずっと愛せる。」 一也の一方的な愛の囁きと歪な価値観の毒は止まらない。一也の周りにいた連中なんて俺と例の覚えのない約束があるだけで、今の一也を歪ませている。 「お前…そう言う奴だったのか?」 「そう言う奴…?」 「なんて言うかな…失望?お前は、俺より何でもできて、リーダーシップもよくて慕う奴らもいっぱいいて。 正直俺の憧れみたいな側面もあったんだ。 でも、でもさ?どんな偉人でも欠点があるように、お前にも…あったんだな」 「だから!俺はお前を!」 「もういい。もういいよ、言い訳なんて」 「…んで、なん…だよ…なんでなんだよ!何でそんな拒絶するんだよっ‼︎ 約束、したんじゃなかったじゃないのかよ!俺達…」 「だからっ!その約束って一体なんだよ⁉︎」 最早俺自身も何を言っているかすら分からなくなってくる。お互い、半泣きになりながら、見えない何かを延々と殴り続けているような、無駄で回りくどい問答を繰り返している。 「…もう、いいよ。お前が、そこまで拒絶するってのなら」 「お前を、誰の手にも触れられないようにしてやる」 「そうだな。最初からそうすれば良かったんだ。お前をずっとそばに置いておいて、好きな時に好きな様にお前を感じれて。悪い虫からも守っていける。うん、いいじゃないか。我ながら名案だな。 お前もそれでいいよな?頼もしくなった俺に守ってもらえるんだ、ありがたいだろう?」 一也はそのままぶつぶつと末恐ろしい事を、俺の顔を凝視しながらぶつぶつと呟いている。その朱色の瞳には光が通っておらず、心ここに在らずと言ったところ。 俺が、俺が一也を、知らないうちにここまで変えてしまったのだろう。一也の言う約束を忘れてしまったせいで。本当に、俺の身に覚えがないが。その約束が一也にとってどれほどの物だったかを揶揄していたと同時に、本当に一也といつの日かに、確かに交わしたのだと物語っていた。 「じゃあ、陽輝。少し、大人しくしようか。大丈夫だ、ちょっと痛くするが、これからする事は全部お前のためなんだ」 平気さ。俺も今から、お前にさっき以上のことをするから。 「…ごめん…一也っ‼︎」 一也がそこからさらに顔を近づけたところに、俺は出せる全部の力を拳に込めて、一也の鼻っ柱目掛けて右ストレートをかました。 「ンガーーーっ⁉︎」 その瞬間鼓膜が破れそうな一也の悲鳴が部屋中に木霊する。ホント、この部屋が防音特化でよかった。 今は、出来るだけ騒ぎになってほしくないから。 一也は俺に殴られたマズルを両手で押さえ、後退りながらその場で怯んだ。 俺はその一瞬をつき、一也の体の間を縫って、ベットから起き上がり、脱兎の如く部屋から脱出した。 「まっ、待て!」 背後から、怯みから復活したであろう一也が声を荒げながら引き止める。今、一也に捕まってしまったら最悪 ていそ…。もとい、一也の口ぶりからして俺を、それこそ2度と日の目を拝められない様にするとか。 それより、そんな事を考えている暇はなかった。一也に追いかけられないうちに早く玄関を突っ切って、今はどこかへ逃げなければ。俺の頭の中は、それしかなかったのだ。 そして、俺は無我夢中で外へ出て、エレベーターはあえて使わず、階段を1階まで降りて、エントランスを横切り、夜の契街をとにかく走り続けた。 逃げて、逃げ続けて。かと言ってこうして走り続けることに意味は無く、ただ身の安全のため、一也から距離を置きたいだけ。 幸い今はほろ酔い程度だが、酒が回っている。陸上選手のように疲れ知らずにもっと早く、走って、 走って、走って…。

「…?あれ…なんか、暖かい?」 目が覚めたと同時にやってくる、気怠けな感覚。カーテンの隙間から差し込む光。つまりは朝…? 「あ、やっと起きたクロちゃん?もう昼だよ。」 「クロちゃん?…え?」 声のした方へ向くと、そこには紺色の毛皮の猫獣人の女性が立っていた。それも……胸毛が見えるちょっとセクシーな服装で。 「ど、どちら様で…?」 俺がそう言いかけると次の瞬間、湿った感触が顔全体を覆った。

「ああ、ええとつまり。貴方は高校の時の同級生の灰空美佳さんで…」 「なんで、そんな他人行儀なの?知らない仲じゃないでしょ?」 「それはそうなんですが…俺、責任はちゃんと取ります。」 「はあ?アナタまだ寝惚けてるの?」 「出来ちゃったなら、俺今の大学辞めてどこかに就職するし、面倒な手続きとかも、そしてもしも時の保険とか…」 「はあ…」 そしてまた、顔全体に濡れタオルでガシガシ拭かれました。 それでまあ、これまでの経緯を洗いざらい話してくれましたとさ。 美佳さんがバイト帰りの途中、公園で倒れている俺を発見して、そのまま家まで背負ってくれたらしい。 なんでわざわざ、介抱してくれたのかと言うと、猫の気まぐれらしい。 俺は素直に感謝して、今度は俺の経緯を話し始めた。 「はあ⁉︎アナタ、私との子供出来ちゃったと思ったの⁉︎」 「…はい」 「はあ〜。アナタってば高校卒業してからな〜んにも変わってないのね」 「だって、昨日は少なからずお酒が入っていたし、起きたら知らない部屋のベットで寝ていて、隣には美佳さんがその…そんな格好でいるから」 「はあ〜。まあ、いいわ安心して。この通り、健康そのもの。それに、その様子だと気の弱い女の子でさえ襲える度胸があるとも思えないしね」 う〜ん寝起き一番で、なんでこんなに罵倒されているのだろうか俺は。まあ全て彼女の言う通りだから仕方ないが。別に度胸がないとかじゃないけど、あいつみたいに女の子との付き合い方が…あいつ。 「ん?どうかしたの?」 「…いや、なんでもない。助けてくれて、ありがとう。今度、何か奢るから、んじゃ」 「待ちなさい」 「へ?なんだよ、忘れ物なら特に…」 「アナタ、失恋したでしょ」 「はあ?突然何を」 「アナタの顔に文字と表情に書いてあるもの。ずっと付き合って、ある日突然振られてしまった、私の友達にそっくりだもの」 「急に占い師のものまね?悪いけど、俺急いでるから」 「その年までチェリーのあんたに土曜の昼に急ぎの用事があるとは思えないけど?」 「だったら何?」 「少し、私に付き合いなさい。正確にはアナタの事情を洗いざらい話しなさい」 「なんで」 「あら、さっき何か奢るって自分で言ったじゃない。それとも、折角助けてあげたのに、それを無碍にするつもり?」 「分かったよ…」

俺は昨日、一也から告白された事。けれども受け入れ難いと拒否して飛び出してきた事まで話した。 「……」 けれど、全て話終わると、美佳さんはさっきとは打って変わって、怒りの表情を露わにしていた。 「アナタねぇ、本気なの?」 「いや、普通に考えて、こうもなるだろ?俺はも一也も男だ。常識的に考えて、受け入れるのは俺自身も難しい」 「違うわよ!」 「違うって…何が?」 「私が、私がっ、どれだけアンタからの屈辱に耐えたと思っているの⁉︎」 「いきなりなんだよ?約束の次は屈辱?」 「アンタ、私がかつてシロちゃんにフラれたのは知っているでしょう⁉︎なんでフラれたか、分かっているでしょう?」 「まさか…」 「そう、アンタを好きだったからよ。私はすぐに分かったわ、どこにいっても何をするにもアンタの話ばっかりしててね」 「…」 「それまで私は!アンタのための当て馬にだったのよ⁉︎憎かった、殺して喰ってやりたいくらいに!」 「美佳さん…」 「でもね、アンタを八つ裂きにしたところで、シロちゃんとまた付き合えるかって言ったら違うって言われて。そんなことしてもただの逆恨みだってね」 「じゃあ、俺の事は許して、くれるのか?」 「ええ。それよりも、アンタとシロちゃんについてよ。告白されたんでしょ?答えはどうなの?」 「どうって…分からないよ。俺だって、このままでいいわけないと思ってるし、でもどう答えればいいか分かんなくて!」 「はあ〜〜〜っもお!どうしよ〜うもないほどのビビリね。いい?雄でも雌でも求愛されたら選択肢は、YESとNOしかないの!答えを先延ばしにするって言う項目はないの!Are you ok?」 「でも、俺は男で、一也だって雄だ。忘れたのか?」 「むっはー⁉︎チェリーな上に時代錯誤ときた〜。アンタにこそ私が受けた傷と薬をあげたいわ〜、全く」 「あのね〜アンタ半分陰キャみたいだったから知らないだろうけど、うちの高校、同性カップルとか普通にいたわよ。」 「ええー⁉︎」 そうか、道理で同性同士で居る人が多いなとと思ったら、そういうことだったのか⁉︎俺の知らないところでそんなフシダラなことが起きていたのか⁉︎ 「あ〜まず、人間と獣人の恋愛価値観の違いについて知らなかったパターンか?」 「ど、どういう事?」 「私たちの獣人はね、同性恋愛なんて割とメジャーになっているの。私は異性が好きだってタイプだけど、まあ、それには獣人しか分からない事情が複雑に絡み合っていて…人間のアンタに話しても分からないか。」 「え、なんだよそれ、気になる」 「言っておくけど、ちょっと下品な話になるわよ?」 「遠慮しておきます」 「まあ、そんなで昔に色々なことがあったから、獣人側は比較的寛容なわけで。人間側のアンタからしたら、私たちの恋愛価値観は歪に見えるってわけね」 「そう、だったのか…」 「シロちゃんもアナタの悪気があって言ったわけじゃない。それは私でなくともわかるはずでしょう?」 「それは…」 「今すぐ答えを決めなくてもいいわ。少なくとも、私の戦いが終わるまでには決めて欲しいわね」 彼女のそう言い残して、部屋から去っていき、遠くで扉の締める音が聞こえたのを皮切りに辺りが静かになった。

先程彼女が言っていた言葉が、頭の中で残り続けて、この悩みの解決まで、道標が築かれたような気がする。 獣人の恋愛価値観。もとい、人間と獣人の違い。それはどちらにも理解し難い、世界。現実。 俺は、少なくとも人間と獣人、どちらの社会でも上手くやれている自信はあった。 けれど、俺のしてきたことは、人間としての自分の定規で都合のいいことだけを受け入れ、都合の悪いことは 排他してきたに過ぎなかった。 獣人側の言い分を真っ向から否定して、傷つけるだけ傷つけてきた。 分かるのが遅過ぎた。一也の告白を受けるか否か。冷静な考えだって取れただろう。 一也は今頃、どうしているだろうか。怒っているか、泣いているか、落ち込んでいるか。 「あれ?」 なんで俺、あいつの事考えているんだろう。そりゃ、酷い目にはあったけど、それは純粋に友達として心配だから…。 なんでまた会いたいんだ?

そうして結局、答えが行きつかないまま戻ってきてしまった。 俺は昨日飛び出してきたのマンションの前にいる。 ただ、無性にここに帰ってきたくて、美佳さんの家を出てきて、それから知っている道を辿って今に至る。

なんだろうか。昨日はあれほど必死に逃げてきた場所のはずなのに、今は酷く帰りたい一心だ。 けれども、あの時の出来事が脳裏にチラついて、入り口が目の前にあるものの、その一歩が踏み出せずにいた。

「陽輝…?」

ふと、身に覚えのある声で自分の名前を呼びかけられる。 声のした方にいたのは、白くて大きい狼。一也だった。 一也は俺に一歩近づくと、また一歩俺から退いた。その様子になんだか寂しさを感じて、俺は自ら一也の側へ 歩み寄った。不思議と一也の側へ立っていても昨日の恐怖心は微塵も湧かなかった。 「取り敢えず、中で話すか」 「ああ」 そんな俺を見て、一也も安心したのか、二人でマンションの入り口へと入っていって、二人の住む部屋と進んでいった。

扉を開けて、出迎えてくれたのは懐かしいような景色、匂い、思い出。 まさに実家のような安心感。ついさっきまであんなことが嘘のように感じた。 リビングのテーブル席に座り、お互い見つめ合いながら、数秒の沈黙の後。 「あのさ、まだ怒ってるか?」 「…いいや。襲われたことに関してはもう、いい。ごめん、あんなこと言って」 「俺の方こそ、済まなかった」 また、沈黙。 真夏の昼間の湿った空気と共に、この空間を気まずさと一緒に占めていた。 頬に汗が伝う。被毛に汗が染み込む。 「今日さ、美佳ってヒトに会ったんだ。一也の元カノ」 「…会ってどうしたんだ?」 「色々教えてくれた。付き合ってた時のお前とか、俺を好きだったとか。…獣人の恋愛観とか」 「陽輝…分かってくれとは言わない。けど、俺はお前を守っていきたい。約束だからな。 これから先何があろうと、たとえお前に拒絶されても。この気持ちはもう、折れたりしない」 「でもさ、俺。その約束、本当に分からないんだ。いつ交わしたのか、記憶に全く無いんだ。」 「じゃあ、覚えているか?俺たちが初めて会った時のこと。」 「それって中学の頃じゃ。」 「実はさ、もっと前に出会っているんだ、俺たちって。」 「え?」 そう言って、一也は左の頬のところに指を刺した。そこを、よく凝視してみると、白の被毛の奥の皮膚に、古い痣が見えた。 なんてことのない。至って普通の…でも、何故かひどく懐かしい気がして。 「ほら、見えるか?ここの痣。これ、俺の夢のきっかけ」 「っ!ああ、ああ…」 なんで、なんで忘れてたんだろう。昔の、出会っては別れを繰り返していた、憂鬱な道筋の途中に置いてきた、記憶の数々。その中でも鮮明に覚えているのは、白くて小さな狼に本当に初めて出会った記憶。

いつの日だったか、それこそ俺が小学校低学年の頃。 悪戯が日常茶飯事で、近所からは悪ガキと言われていた。 ある時、帰り道の途中にある公園のトイレの裏手に、同い年くらいの狼獣人と、そいつよりも背丈が高い、多分上級生らしき3人組の人間と獣人のグループが入っていったのを目撃した。 子供の鋭敏な感というか、発見して直後にただ事ではない気がして、後をついていった。 案の定か、そこには一方的な喧嘩が起こっていた。 「やめろ!」 気がつけば俺はその小さな狼を庇うように立っていた。正義の味方気取りで、許せなくて。 「なんだよお前、急に出てきて」 「邪魔だよ、どっか行けよ」 「そうそう俺たちは遊んでんのさ。ヒーローごっこ。お前もやるだろ?」 「ヒーローが悪くないやつを殴っていいのか?」 「別に、俺がヒーロー役やってて、そいつが怪人役ってだけ。そうだよな?」 「…」 「さ、わかったらそこ、どけよ。怪人にとどめさせないだろ?悪い奴は、ヒーローがやっつけなきゃ、な」 「だったら…お前らの方が悪いやつだーっ!」 俺の叫び声を皮切りに喧嘩の火蓋が切って落とされた。 子供同士の喧嘩ってのは、勝つか負けるかなんて頭に入れない。売られたから買う、それだけ。 まずは、リーダー格の虎獣人に目掛けて距離を詰め、怒りと勢いを合わせたパンチを鳩尾に喰らわせた。 それが意外と大打撃になったのか、1発で相手は怯んでしまった。 そんな様を見て、他の二人は一目散に退散していき、それに続いて虎獣人の方も逃げていった。 「お前!平気か?怪我してないか?」 「大丈夫だ!お前は殴られても泣かないでちゃんと我慢できたんだ!偉いぞ!」 「う、うん」 狼の少年は半泣きになりながらも、俺に対して無理に笑いながら答えた。 その真っ白な毛皮が赤く染まっていながら。 その後、一也の母親による手当てで血は塞がり、痛みも引いたが。傷が思った以上に深刻で痕が残るとのことだった。 だが、幸い残った傷痕の大きさは小さく目立たないため、その後も大した騒ぎにはならなかった。

ともかく、これが俺と一也の出会いだった。 俺たちは通う学校は違うものの、住んでいた場所は、それほど離れはいなかったため、ほぼ毎日出会って遊んでいて、気づけば、仲良くなって、家族ぐるみにまで親睦が発展した。 だが、一也と出会って1年かそこらで、父が転勤を命じられて、別れの時が急に来たのだ。 「僕、僕!陽輝くんのことわすれないから!」 「ああ、俺も忘れない。」 「また会うときは、もっと大きくなって、強くなって。今度は陽輝くんを守っていきたい!約束!」 別れの日の前に交わしていた、お互いの再会した時の約束。俺が、一也が例えこの先一人でも、挫けないように半ばまじないの様に言った言葉。いつか二人が再開した時、また一緒に仲良くなれるように。 それが、約束の正体。 そして、別れの日の当日。白い狼は、狼にとっての太陽に向かって何度も何度も強く叫んでいた。

「思い出したか?」 そして今、思い出の中の小さな狼が、どんどん大きくなった姿がそこにいた。 本当に大きくなって、強くて、カッコよくて。 「うん、全部」 「俺、あの時お前に助けられてさ、この人をずっと支えていこうって思ったんだ。 でも、俺にはできる自信がなくて、諦めかけて。 それでもお前は、強引だったけど、背中を押してくれて。 気がつけば、俺はもう陽輝、お前に夢中だった」 「改めて言わせてくれ。俺はお前のことが好きだ。初めて会った時…助けてもらった時から。 これからも側で守っていきたい」 一也は、その緋色の瞳を片時もこちらへ逸らさず、真っ直ぐと見据える。その気持ちが本心で、嘘がなくて、曇りなくて、握られた両手が、温かいように。 100%中120%が俺のことを慕ってくれると、感じ取れた。 「俺も…まだ、よく分からないけど。俺も一也と一緒に居たい、ずっと。それこそ、これから何年も何十年も…これが、好きってことなのか?」 約束と一緒に忘れてきた、誰かを大切にしたい気持ち。すぐに出会いと別れを繰り返すのが、ヒトなら。それが、俺の人生なら、不要と思って。別れの時に抱くあの冷たい感情が付き纏うなら。 捨ててきた。けど、一也のお陰でそれも取り戻せた気がする。 初めてヒトを本気で愛して、それが、俺の1番の友人だって。 「陽輝がそう思うなら、きっとそうだよ。」 「そっか…」 愛の形も色々ってか? ならこの思いもいつかの時のように、一生忘れないようにしようか。 「なあ、陽輝」 「ん?」 「もう、俺から離れるなよ…」 「大丈夫。俺が、一也のそばを離れないし。離れたくないから」

そう、それは偶然でしかない。 一也との出会いも、これまでの軌跡全ては誰かが仕組んだ偶然のよく出来た話。 けれど全てがそう割り切れるわけではない。 お互い芽生えた様々な気持ち、感情は正真正銘自分たちの芯から生まれたものだ。 嫉妬、友情、憧憬、傲慢、尊敬、羨望、そして好意。 それらはフィクションでは絶対に生み出せない産物。 俺達は自信を持って答える。 俺達の間柄は決して、よく出来た話なんかじゃなく、互いのヒトと本音をぶつけ合って出来た、 歪で、粋のある。たった一つの線で結ばれた番であると。